保育雑感

No119.平成25年2月 「常(とこ)若(わか)」

年が明けて最初の行事である「餅つき大会」が、風もなく暖かいお天気に恵まれたなか、園庭で賑やかに行われました。見学にいらっしゃった保護者の方々にも、臼と杵で餅つきを体験して頂きました。餅つき経験のあるお父さんが餅をつくと、杵使いの技の上手さとその迫力に、子供達と保育士達は圧倒され、大興奮でした。今年用いた杵は、昨年までの大きく重い杵ではなく、パンダ組のh君のおじいちゃんが、子供用に改造してくれた杵です。杵を作ってくれたおじいちゃんと、杵で餅をついてくれたお父さんの「昔取った杵柄」の知恵と経験のお蔭で、例年以上に楽しい「餅つき大会」となりました。
「ぺったん、ぺったん」という元気な掛け声と共に、彩の国保育園の2013年は目出度くスタートを切りました。
2013年=平成25年は日本にとって奇跡の年と言われています。というのは、日本の神々が宿る伊勢神宮と出雲大社の御遷宮が重なる一生に一度あるかないかの特別な年だからです。(伊勢神宮は20年に一度、出雲大社は60年ぶり)遷宮とは、神社などで一定の年数を定めて社殿を修理、造営し、新しい社殿に御神体を遷すことです。遷宮の由来は、日本特有の「常(とこ)若(わか)」という思想から生まれたと言われています。常に若々しく、瑞々しくある状態を「常若」と言いますが、「原点回帰」とか「古くて新しい」という言葉に置き換えて解釈することもできると思います。危機感や閉塞感のある大変な時代であっても、私達日本人の血の中に受け継がれている、遠い昔の先人達の叡智を思い起こし、忘れないように努め、今年もまた一年、子供達と共に歩み進みましょう。

No118.平成25年1月号 「クリスマスとお正月どっちが楽しい?」

昨日、クリスマス会を行いました。ヒヨコは、赤いマントを着けサンタになって、「赤鼻のトナカイ」の曲に合わせて、ダンスを披露。バンビは「山の音楽家」の曲を用いた劇と、手遊びを発表。パンダは、音楽会で歌った「静かなクリスマス」と「ハッピーチルドレン」の2曲を大合唱。どのクラスも日頃の保育の中で楽しんで活動している様子がうかがわれる発表でした。大塩先生手作りのブラブラサンタペープサートが大受け。また、どこから来たのか黒縁メガネのサンタクロースのユーモラスなジェスチャーにも大喜び。みんなでいっぱい笑ったクリスマス会でした。ご家庭でもケーキやプレゼントを用意して、楽しいパーティーを企画していることでしょうが、クリスマスが終わったら、日本古来のお正月が控えています。伝統や風習を子供達に伝え日本文化のすばらしさをたやさないようにしたいものです。おせち料理は、クリスマス料理にはみられない、食の知恵がこめられています。羽根つき、独楽、凧揚げ、福笑い等等の正月遊びは百年昔、千年昔から続いています。おせちを食べて、お年玉をもらって、家族でかるたを楽しんだ子どもの頃の記憶は、いくつになっても忘れません。クリスマスもお正月もどちらも優劣つけがたい。子供心に戻って、お子様と楽しい年末年始をお過ごし下さい。

No117.平成24年12月号 「速し、楽し、忙し師走」

暑く長かった夏の印象を引きずりながら、秋を満喫しないうちに、いつの間にか、気が付くと路上のかえでの葉っぱが木枯らしに舞い踊る季節になっていました。12月が近づくと時の流れの速さに驚き、ふと、立ち止ってしまいます。
保育室からは「♪百の物語が百年繰り返す~千の物語が千年繰り返す~遠い窓に灯りがともる♪~」と永遠の時を刻み続けてきた人間の営みを慈しむような歌詞に載せて、子供達の可愛い歌声が聞こえてきて、また、ふと足を止めます。感傷に浸って一年を振り返りかけたら、「♪ハッピー、ハッピー、ハッピーチルドレン♪~」と、窓ガラスが割れんばかりの元気な歌声に背中を押されて、まだまだ一年は終わってないんだ忙し忙しと、今度は師走走りになってしまいました。音楽会に向けた子供達の猛練習はこれからが大詰めです。保護者の皆様もお忙しいこととは思いますが、音楽会を楽しみにお待ち頂き、笑顔で師走をお迎え下さい。

No116.平成24年11月号 「運動会と音楽会」

秋から冬にかけて、運動会と音楽会の二大イベントが続く中で、子供達、特にパンダ組さんは、練習、練習の毎日です。この二つの行事の成果は、まさに秋の実りさながらです。運動会では、練習を重ねることでひとりひとりの発育、発達が促され、昨日できなかったことが今日できるという目覚ましい成長が見られました。また、集団の一員としての態度や行動を学び、集団の規律や力を合わせる大切さの理解も深まったことでしょう。運動会の競技の中で、最も感動を呼ぶのが集団演技ですが、規律正しく、皆と力をあわせる子供達の姿に、涙したご父兄も多かったことでしょう。社会の中で生きていく人間として、真摯でひたむきな和を重んじる精神が集団演技には宿っているからなのでしょうか?ご自分の子供が出ていないのに、涙が出てしまったという方が何人もいらっしゃいました。
さて、音楽会でも子供達は、成長の階段を一歩一歩登ります。今年は、「くるみ割り人形」ですが、クリスマスの夜に繰り広げられる不思議な物語を、歌と踊りで表現します。例年のごとく、プロの音楽家の方々に加え、今年はバレリーナーも参加して頂き、クラシックバレーの舞台の雰囲気を取り入れてみました。クラシックバレーの素晴らしさは、集団の規律ある仕組みと明確な配役分担、ソリストとコール・ド・バレエの対比の面白さ、そして全員にスポットがあたり拍手を受けられる舞台進行の仕方にあると思いますが、それにあやかって、子供達もみんなで力を合わせて練習に励み、ひとつの舞台を作る中で、自分の役割を掴み、成長の糧を得て欲しいと思います。ちなみに、「くるみ割り人形」は色々なバレー団で公演が予定されていますが、この度、世界文化賞を受賞した森下洋子(還暦を過ぎてもプリマとして活躍している世界的プリマバレリーナー)の舞台がお勧めです。

No115.平成24年10月号 「秋の登山の勧め」

昨日、卒園児である3年生のK君が、久しぶりに保育園を訪ねて来てくれました。K君のご両親は共に体育大卒業で、大のスポーツ愛好家。子どもの習い事は、空手にスイミングに体操に野球。そして、卒園遠足での筑波山登山以来、富士登山に憧れ、家族全員(男4女1のファブリーズファミリー)で富士の山頂に立つのが夢!まずは父親と長男のK君が登頂に成功し、来年は年長になる次男も山頂を目指すとか。登山の話で盛り上がり、私が先日、日本で2番目に高い山に登ってきた話をすると、K君の目がキラリ。そういえば、富士登山に成功した小学3年生の男の子に山で出会いましたが、その父親曰く、「今度は2番目の山に登りたい!」と言うので連れてきたと言っていました。北岳3193mの山頂で、「次は3番目の山に登りたい!」と、きっとその子は思ったことでしょう。
ちなみに、日本の高い山ベスト5は、1、富士山(3,776m)2、北岳(3,193m)3、奥穂高岳(3,190m)4、間の岳(3,189m)5、槍ヶ岳(3,180m)です。
未来のアルピニストの為に、世界の高い山ベスト5もあげておきましょう。1、エベレスト(8,848m)2、K2(8,611m)3、カチェンジェンガ(8,586m)4、ローツェ(8,516m)5、マカルー(8,463m)。
スポーツの秋、運動会も近づき、園児達は毎日練習に励んでいます。ご家庭でも、家族でスポーツをお楽しみください。山登り、お勧めですよ…!

No114.平成24年9月号 「岡島先生を悼む」

調理師として、長年に渡り子ども達に美味しい給食を作ってくれていた岡島節子先生が、8月17日にお亡くなりになりました。昨年7月から闘病生活に入りましたが、辛いはずの抗がん剤治療も笑顔で乗り切り、治ったらまた子ども達に給食を作ると約束していました。温かいものは温かいうちに、一味工夫して子どもの口に合うものを、と20年間のレストラン経営の料理人のプライドと子どもを想う慈愛に満ち溢れた人間性で、彩の国保育園を台所から支えてくれていました。私達にとって、かけがえのない先生でした。
コーヒーが好きでした。その人生は、コーヒーのように薫り高く、周囲の人を癒してくれました。
フェルメールが好きでした。その人生は、強い意志を優しい光で包んだフェルメールの絵のように魅力的でした。
命あるものいずれは死と向かい合わなければなりませんが、最期まで人を気遣いながら旅立たれた岡島先生の態度に敬意を表し、追悼を捧げます。

No113.平成24年8月号 「お泊り保育」

夏といえば、子ども達が一番楽しみにしているのは、お泊り保育。今年は、ぜひ参加したい!と名乗りを上げた卒園児6名も含めて32名が大集合。そして、スペシャルゲストが来るよ!と聞かされていた子ども達は、育児休暇中の武内友里先生と3ケ月の赤ちゃんの突然の登場に驚きつつも、大喜びでした。恒例の花火大会もさることながら、今年のメインは、「ヒミツの迷路」と題して子ども達に内緒にしていた迷路仕立てのお化け屋敷。段ボールを繋げた全長10mのお化け迷路は、ハイハイで進入し、段々狭くなり途中からほふく前進。真っ暗闇の中を二人組で入って行きますが、泣く子が続出。どうしても入れない子を先導して私も入ってみたものの、行き止まりや仕掛けに阻まれ、四苦八苦。一度トンネルを抜けたところで鍵を受け取り、出口でお菓子に交換という仕組み。
以前、似た経験をしたことがあったなぁと思ったら、なんと旅先で訪れた長野県善光寺の「お戒壇めぐり」でした。真っ暗な回廊を抜け、錠前を探り当てると、ご褒美はお菓子ではなく、極楽浄土への道でしたが…

No112.平成24年7月号 「七夕祭り」

日本中が猫も杓子も空を見上げた金環日食は、天体ブームが巻き起こし、流行に敏感な若い女性達の間では宙ガールが急増しているとか。昨今あまり人気のなかった日本古来の七夕の行事も、金環日食の余波で、今年は天の川を見上げ七夕を楽しむ人も増えるのではないでしょうか。保育現場では、流行り廃れなく年中行事として、毎年、子ども達は七夕祭りを楽しんでいます。今年も各クラスのお部屋には、願い事が書かれた短冊が飾られ、7月7日を迎える準備が着々と進んでいます。5日には、七夕発表会と称して、クラスごとに、みんなの前で発表をします。ヒヨコ組はダンスとリズム遊び、バンビ組はダンスと歌、パンダ組は「桃太郎」の劇を発表します。園庭で行う予定なので、晴れてくれるといいのですが…
七夕祭りといえば、仙台の七夕祭りが有名ですが、今年は、全国からの復興支援に対する感謝の気持ちを込めて、「願い、希望、感謝」をテーマにして開催するそうです。全国から願い事を募集しているので、私も送ってみました。インターネットで簡単に送れるので、皆様もお試しあれ!

No111.平成24年6月号 「天国へ逝ったアリス」

うさぎのアリスが保育園にやってきてから、かれこれ5年が経ちますが、先日、5月22日に急死してしまいました。前日、いつものように大きなうさぎ小屋で子ども達にたんぽぽのえさをもらってムシャムシャ食べて元気にしていましたが、その夜、ジーッと動かず、元気がありませんでした。翌日、病院に診せようと思っていましたが、朝を待たず亡くなってしまいました。
アリスは、今まで多くの子ども達を慰めてくれました。入園したばかりの子も、ママと別れられずに泣く子も、アリスを見せてあげたり、エサを一緒にあげたりすると、泣き止み、笑顔になって機嫌が直ります。アリスの魔法です。小動物達は、人間の大人にはできない、子どもを癒す、不思議な力があると感じます。言葉をうまく使えない子ども達は、小動物達とより近い存在なのでしょう。ダンゴ虫やハエや蚊でさえも、子ども達を元気にしてくれます。
今は、アリスの代わりに、金魚が水槽の中から子ども達を見守ってくれています。この金魚も、アリスと同様、近所の斉藤さんが持ってきてくれたものです。
生きとし生けるもの、終わる時はあることを子ども達もいつか知らねばならない時が来ます。アリスは天国へ逝った後も、子ども達に大切なことを教えてくれることでしょう。

No110.平成24年5月号 「赤いカーネーションと黄色いバラ」

5月の第2日曜は母の日。保育園ではどのクラスもプレゼント作りに勤しんでいるところです。母の日の花といえば、赤いカーネーションですが、十字架に架けられたキリストを見送った聖母マリアが落とした涙から生じた花だと言われており、“母と子”や“母性愛“を象徴しているとのこと。
それでは、父の日の花といえば、何の花かご存知ですか。本来は白いバラの花でしたが、日本では黄色いバラが定着しました。幸せを呼ぶ色として、家庭のイベントには、ふさわしい色です。ママ、パパ、どうぞお子様からの手作りプレゼントをお楽しみにお待ちください。

No109.平成24年4月号 「百名山踏破を目指せ」

卒園式を真近に控えた3月11日、きしくも東日本大震災と同じ日に、卒園児10名と保護者、職員を含め総勢34名で筑波山山頂を目指す登山に挑みました。
日本百名山の中で標高が一番低い877米の1000米に満たない山ですが、「西の富士、東の筑波」と称される名峰で、今話題のスカイツリーからも、その双耳峰の美しい姿が見られるということです。前日降った雪で、滅多に見られない雪化粧の筑波はとても美しかったのですが、滑りやすいので足場が悪く大変でした。しかし、誰も脱落者なく、全員が登頂に成功しました。大満足感を抱き下山する時の気分は爽快です。目指す山頂に向かって、一歩一歩登る過程は楽ではありませんが、苦しければ苦しい程、喜びは大きいものです。
登山のごとく、「目標に向かって努力する」という試練は、卒園後の子ども達の行く先には数知れず待ち受けています。卒園の門出に体験した筑波山登頂を事始めとして、百名山ならぬ百の目標に向かって臆することなく挑戦して百の頂上を極めてくれることを祈っています。

No108.平成24年3月号 「思いやりの心育成プロジェクト」

東日本大震災からもうすぐ一年が経とうとしています。この一年間被災地応援のボランティア活動を日本中の人々が様々な形で行ってきました。彩の国保育園の子ども達も、微力ではありますが、パンダ組J君のお母様のお勧めにより、「思いやりの心育成プロジェクト」に参加することができました。石塚観光が茨城県社会福祉協議会の協力のもと、「ボランティアバス」の運行を震災直後から行っていることは皆様もご存じのことと思いますが、その活動の一環として、がれきを詰める土のう袋に子ども達が絵を描き、被災地の皆さんを応援すると共に、子ども達に思いやりの心を育てるというねらいをもったボランティア活動です。昨年暮れに絵を描きましたが、その土のう袋がきっと活躍してくれたことでしょう。石塚観光のホームページでこのプロジェクトの概要を知ることができます。彩の国保育園の名前も掲載されておりますので、是非ご覧ください。被災地の人々の為に何かしたいと思っていてもその機会に恵まれない方も多いことと思いますが、このプロジェクトの他にも素晴らしいプロジェクトがありますので、石塚観光のホームページをのぞいてみてください。

No107.平成24年2月号 「餅に力あり」

「ぺったんこ、それぺったんこ、お餅をつきましょ、ぺったんこ」と大きな歌声に合わせて、保育園の園庭に勢揃いした子ども達は、昨日、元気にお餅つきを楽しみました。杵の重さより軽く小さいヒヨコ組の子ども達も先生に支えられて、お餅つきを体験しました。臼の中を覗き込んで興味津々のK君を始め、愛らしく可愛い姿をお兄さんお姉さんの前で披露してくれました。自分達でついたお餅を戸外で食べるというのは、子ども達にとって大人が思っている以上に楽しいようで、みんなおかわりをしてきなこ餅や餅入りのけんちん汁をたらふく食べました。年長さんはつきたてのお餅をちぎってきなこにまぶすお手伝いをしましたが、「熱い~!!」「大きすぎる~!」などと言いながら、賑やかなこと賑やかなこと、餅の感触で楽しさ倍増。ついて、触って、食べて、もちもちの餅は子どもに元気を与えてくれました。
そういえば、民俗学の父、柳田国男が「餅に力ありという信仰は日本人の起源をとくカギである。」と言っています。餅は日本の歴史の中で、特別な「ハレの食物」と考えられており、神への供え物でもありましたが、年々日本古来の行事はすたれ、餅の消費量も年々減少し、若い世代では年間500円ほどの支出だそうです。「餅に力あり」とすれば、最近の日本人が元気がないのは、餅を食べないからでしょうか?
柳田国男が「雪国の春」で、東北は日本の穀倉として稲作文化を牽引したと書いていますが、稲作文化が「東北復興」の原動力であるならば、餅や米をたくさん食べて、少しでも役に立てばと思います。

No106.平成24年1月号 「サンタクロースからのプレゼント」

Xマスが近づくと、子どもへのサンタさんからのプレゼントを何にしようかと頭を悩ますものです。子どもの喜ぶ顔が見たくて探りを入れますが、聞くたびに欲しい物が変わって、困っている親御さんも多いことでしょう。ところで、放射能汚染で、外で遊べない子ども達に素敵なXマスプレゼントを贈ろうと多くの大人たちが準備を進めてきました。菊池信太郎医師を中心に建設された「郡山市元気な遊びのひろば」が12月23日にオープンされます。
「郡山市の現状は現在でも外遊び、屋外での運動が十分にできない状態です。子ども達の様子を観察しますと、体の面では、筋肉の強張り、肩こり、頭痛、元気がない、体力が落ちた、感染症などによる抵抗力の減退、そして怪我の種類の変化などが見られます。子ども達にとって外遊びや戸外での運動ができないことがどういった弊害を起こすかというと、子ども達は体を動かすことが仕事なので、それができない分体力が低下したり運動神経が発達しなかったり、または子どものストレスに対応できない保護者がご自身のストレスを増加させてしまいます。また、子ども同士が遊んだり、学んだりする社会性の学習機会が減少したり、子ども同士、大人同士のコミュニケーションが減ってしまいます。こういった状況を危惧して、子ども達が安心して遊べる屋内遊び場が是非必要だと感じました。」と、菊池医師は、設立の必要性を述べています。この内容を読んで気が付くことは、原発事故がなくても、このような子どもを取り巻く環境は除々に進行していたのではないかということです。外で遊ばない子どもが、外で遊べない子どもになって、更に状況が悪化したと捉えるなら、「災い転じて福となす」の古くからの日本のことわざに宿る日本人の精神を発揮して、子ども達を取り巻く環境を、子育てのあり方を根本から見直して再生の道を歩むべきではないでしょうか。原子力発電所の是非を一から問い直さなければならないように。
菊池医師のような立派な贈り物はできないまでも、クリスマスプレゼントに子どもに何を選ぶかを考えることで、震災の年を締めくくり、新たな年を新たな気持ちで迎えたいものです。

No105.平成23年12月号 「クリスマスコンサート」

今年も残すところ1ヶ月余りとなり、2011年もあと少しで終わろうとしています。早いもので東日本大震災から、早8ヶ月が経過し、まだまだ復興の道のりは長く険しく、日本の行く末は定まりませんが、幸いにも、保育園の子ども達は元気に、例年と変わらない保育行事を行うことができました。毎年年末には、1年間の行事を振り返り、子ども達の成長を確認するのですが、震災にもめげず、今年も行事を一つひとつ経験する度に大きくなっていると実感できます。12月に音楽会を控え、パンダ組は毎日練習に励んでいる真っ最中です。今年は初めてオペレッタに挑戦します。演目は「不思議の国のアリス」ですが、昨年ジョニー・ディップ出演の映画が公開されるなど、今から100年も前に書かれたお話ですが、世界中で愛され続けている名作です。身近な小動物や空想の動物、奇妙な人物や出来事、奇想天外なストーリーなど、道理や理屈のない子どもの頭の中のような不思議な世界を、子ども達と音楽家の方々とのコラボレーションでどのように表現されるのか、どうぞお楽しみに!また、12月にふさわしいおなじみのクリスマスソングもプロの音楽家の方々によりお届け致します。子ども達の成長を喜び、親子で過ごす楽しいひとときは、どんなプレゼントより素晴らしい贈り物となるでしょう。目に見えない親子の、そして家族の絆が、また一つ深まるのですから…

No104.平成23年11月号 「七五三」

子供の七五三祝いをやる時に、誰しも自分自身の七五三の記憶を思い起こすものです。数少ない子供の頃の記憶の中で、晴れ着を着せてもらって嬉しかった気持ちは、幾つになっても忘れられないものです。昔は子の生存率が低く、節目ごとに成長祈願をしたのが七五三の起源ですが、今も昔も子の健やかな成長を願う親の気持ちに変わりはありません。初めて人の親になり子育てに翻弄しながらも、代々受け継がれてきたしきたりや行事を経験するうちに、子と共に親自身も成長していくことができます。その中で自分が受けた親の愛に気付かされる事も多々あることでしょう。薄れていく伝統行事ですが、人としての生き方の教えが、その中に伝授されているように思えます。震災で全てをなくした人々が、瓦礫の中から見つけ出して生きがいとなるのが、位牌と家族写真だと聞きました。目に見えないものが大事なものだという教訓を学んだ私達が、震災後の七五三を迎えて思うことは、子供の成長祈願は、家族の絆を深める行事でもあるということです。記念の家族写真に写された家族の眼差しは、明るい未来を望み見ていることでしょう。
 

No103.平成23年10月号 「運動会によせて」

運動会に向けて園庭整備の為、駐車場に置いてあった砂を園庭に運び入れたところ、さっそく子ども達は砂の山に群がって遊び始めました。今更ながら、砂(土)は子どもの遊びになくてはならないものだと感じました。山を作る、穴やトンネルを掘る、おだんごを作る、おままごとをするなど飽きることなく遊んでいます。震災後、放射能汚染で園庭や校庭で遊べなかった子ども達は、さぞかしつまらなかったことでしょう。砂や土に限らず、海、空、風、森などの自然によって、子どもは育まれます。今回の地震や大津波のように災いをもたらすのも自然ですが、それをも含めて大自然の中で人間は生きていることを教えていく必要性を強く感じます。自然に対する畏敬の念は、災いを転じて恩恵を私達に与えてくれるはずです。津波を被った田畑はいずれ実り多き田畑に生まれ変わるでしょう。しかし放射能汚染した田畑は孫子の代まで毒を吐き続け、不毛の地と化すことでしょう。園の畑を耕しながら考えることは、代々この畑は誰が耕し何を作っていたのだろうかと、祖先のこと、代々受け継がれるもののことなど哲学的思考をしながら、農耕民族のDNAを感じ、代々守ってきた田畑を耕せない農家の人たちの無念に思いを馳せます。
10月2日、子ども達は大地を踏みしめて元気に走ります。子ども達を空から見守る、KING OF NATURE=おひさまが顔を出してくれるといいですね。お父さん、お母さん、応援宜しくお願いします!

No102.平成23年9月号 「登山と震災」

毎年夏に一山登ることを目標にしていますが、今年は北海道大雪山の縦走に挑戦しました。登山愛好家が一度は登りたいトムラウシ山が縦走3日目に組み込まれた山行スケジュールでした。本州のアルプスの山々とは異なり、標高は1千米程低い2千米級の山々ですが、広大な北海道ならではの雄大でワイルドな山登りでした。一言で言うなら、神が創造したそのままの大地にポツンと降ろされ、一本の道筋だけひかれたコースを自力でゴールを目指すサバイバルゲームとでも言った感じです。1日目8時間、2日目10時間、3日目14時間の歩行時間で、体力、気力共生まれて初めての最大出力でした。水道、電気、ガスのライフラインは何も無く、渇いた喉を潤すジュースを売っている自動販売機があればいいのにと何度思ったことか。手つかずの自然を味わうとは、非日常の世界に入り込むと言うことで、文明社会に慣れきった人間には時に生命の危機さえ感じると言っても大袈裟ではありません。あって当たり前と思っていたことが簡単に覆されてしまった大震災後の状況に通ずるものがあり、人間の生存に必用なものが体で実感できたと同時に生命力の源が揺さぶられるような感覚に、再生と復興のエネルギーが宿るような気がしました。

No101.平成23年8月号 「子どもは汗の子、大人は冷房の子」

ヒトの体温は外気温の変化に対応して、体温を一定に保つ機能を持っていますが、その機能に不具合が生じると、体温が上昇すれば熱中症、低下すれば低体温症となり、生命が脅かされます。体温の上限は42℃、下限は35℃でその幅はたった7℃しかありません。体温計の目盛が温度計の目盛に比べて、極端に少ないのはそのせいです。これを逆に考えると温度計が-30℃~50℃まであると言うことは、健全な体温調節機能と環境に対する適切な対処があれば、生命を維持できるということでもあります。
年々過酷になる夏の猛暑の中、子ども達が元気に過ごせるように、健康な体と快適な生活環境を作ってあげることは、私達大人の仕事です。体を鍛えるためには、暑さ寒さを体験して、適応能力を高める必要があります。寒さに負けるなと言う意味の「子どもは風の子、大人は火の子」と言うことわざがありますが、暑さに負けるなと言う意味のことわざが無いので作ってみました。「子供は汗の子、大人は冷房の子」…
折から日本中節電の中、冷房ばかりに頼らない子どもの夏の過ごし方を、おじいちゃんおばあちゃんに聞いてみては如何でしょうか。きっとよい知恵を貸してくれることと思います。

No100.平成23年7月号 「百代の過客」

「太平洋の水湧きて/奥の浜辺を洗ひ去る。/あはれは親も子も死んで/屍も家も村も無し。」これは正岡子規が、明治29年の三陸海岸大津波の情景を描いた詩ですが、今回の東日本大震災と全く同じ光景が、100年余り前に起こっていたことに驚かされます。この詩の後に「人すがる屋根は浮巣のたぐひかな」という一句を明治の偉才は詠んでいますが、17文字の中に、見事に私達がテレビで見たと同じ光景が表現されています。大自然の驚異が繰り返される事実とその光景をリアルに伝えてくれるのは、文学の力と言えるでしょう。歴史上度々大自然の爪牙にさらされる東北地方ですが、平和な佇まいもまた、文学の中にひっそりとその姿を留めています。「月日は百代の過客にして、行きかふ年も又旅人也」という名文で始まる「奥の細道」で俳人松尾芭蕉は、今回の被災地、福島、宮城、岩手を行脚し、東北の美しさや歴史を俳句に収めています。松島では、その美しさに絶句し、「いづれの人か筆をふるひ詞を尽くさん」と、句を残さなかったと言います。それが、今から320年前のこと、今日まで誰も詞を尽くしていませんが、今回の震災で、その日が来るまでには「百代の過客」が行きかわなければならないことでしょう。
この保育雑感の100回として震災を取り上げたのは、被災地の早い復興を願ってはいますが、「百代」の「百」とは永遠という意味もあるように、それこそ百年単位で考えなければならないだろうと感じているからです。正岡子規は34歳の短い一生でしたが百代に名を残し、天変地異は百年単位で歴史上繰り返される。人生も歴史も時の長短は大きな意味をもたないとも言えます。今を生きる生も、過去を生きた生も、未来を生きる生も、全て悠久の時の流れの中ではその価値は等しいと感じる昨今です。
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